これは私が勤める武蔵大学の教育理念ですが、私自身、サルの
研究者として世界中をフィールド・ワーク(学術研究で現地を訪れ、
対象を調査、観察する)で巡ってきた経験から、その大切さを実感し
ます。
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日本が経済大国への道を突き進んでいく七十年代、原生の美し
い自然に溢れた秘境・屋久島は、森を畏敬し自然と共に生きよう
とする人々が行き来する場所となり始めていました。
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屋久島の人たちの暮らしには不思議が息ずいていました。
それは、いつものようにサルの調査に向かう途中のことでした。
山の上から「オハーン、オハーン……」、私は人間とも、動物とも
違う、不思議な声を聞いたのです。しかし、驚いている私に、通りが
かった地元のひとは平然とこういいました。
「ああ、あれかい。きょうは山の神の日だから、神様が海に塩を
汲みに行っているんだ。その通り道を、あんたが邪魔してるんだよ。
向こうへ行こう」
その日は地元の人たちが山の神様へ礼拝する特別な日だという
のです。そんな非科学的なことがあるはずがない。と私は同じ場所
に戻ってみるのですが、今度は海岸から同じ声が聞こえてくる」……
この”神さま”との遭遇は私の考え方を大きく変えました<
暑期數學班。
それぞれのコミュ二ティには自分の常識では理解できないことが、
当たり前の如く存在する。
ならば、彼らの中に息ずいている文化や宗教を疑ったり、否定する
でなく、素直に受け入れていくほうが、彼らの社会を理解していく近道
なのではないか、と考えるようになりました。