ちで口をとがらせていた。
「悠人さんにエスコートさせるとかどんだけ残酷なんだよ。いくら保護者代わりだからってあれはない。おまえ自分がふった自覚はあるのか? 傷口に塩を塗り込むようなもんだろう。悠人さん今にも泣きそうな顔をしてたぞ」
「えっ……でも……」
「別に、そんな顔をしたつもりはないけどね」
背後からのその声に、サンドイッチを頬張った篤史はごふっと咽せた。
話題の本人はニコニコと微笑みながら隣に並ぶ。
「エスコートさせてほしいと頼んだの
婦科中醫は僕の方だよ。けじめとしてね。澪を女性として好きだったのは過去のことだし、そんな腫れうな扱いはしないでほしい」
彼の言うとおり、エスコートは彼の方から早々に頼んできたことである。教会で式を挙げるならその役目をさせてほしいと。実際に悠人は親代わりともいえる存在なので、澪としても彼がふさわしいと思ってお願いした。ただ、けじめと考えていたことまでは知らなかった。澪への気持ちが過去のものとして決着がついたのなら良かったが、勝手ながら、ほんの少しだけ心にすきま風が吹き抜けたような寂しさも感じた。
篤史はぶっきらぼうに吐息を落とし、頭を掻いた。
「まあ、悠人さんが吹っ
新生兒推車切れたならいいけど。こんなビッチより一途で可愛い女の方が似合うと思うし」
さらりとひどいことを言われ、澪はむうっと口をとがらせて渋い顔をした。ビッチというのはさすがに言い過ぎだし、花嫁に向ける言葉でもないと思うが、武蔵とのことを知られているだけに反論しづらい。そう感じたのは澪だけではなかったようで、隣の誠一も、正面の悠人も、軽く苦笑するだけで言い返そうとはしなかった。
「澪ー!」
綾乃が大きく手を振りながら小走りで駆け寄って来た。着ている濃青色のドレスは薄い素材の膝丈で、裾が軽やかに揺れており、シルバーのボ
補習社レロとあいまってとても上品に見える。きちんと髪をまとめて薄化粧を施していることもあり、いつもの粗野なイメージを大きく覆していた。その後ろからは真子と富田もついてき